スミファについて

◆多岐にわたる墨田区のモノづくり

墨田区は都内でも有数のモノづくり企業集積地だ。江戸時代には隅田川の水運利用により瓦や材木、染色などの産業が発展し、豊かな職人文化を生んだ。明治時代になると、日本の軽工業の発祥の地となり、金属加工やガラス、繊維、皮革などさまざまな工場がおこり、日用品や各種部品の製造拠点として、人々の生活を支えてきた。最盛期には1万社ほどあった町工場の数は、いまでは3分の1ほどになっているものの、多岐にわたるジャンルの工場が区内全域に点在している。

 

◆墨田区のモノづくり推進施策とスミファ開催のきっかけ

墨田区にはもともと区が主導するモノづくりによる地域振興事業が存在した。墨田区の産業PRとイメージアップを図るすみだ3M運動(1985年スタート)や、すみだモダン(2012年スタート)といった事業がそれだ。町工場でオリジナルの新商品を開発したり、すでにあるオリジナル商品に対してブランド認証を行って外部に発信していく活動を行っていた。2012年春の東京スカイツリー開業という一大契機もあり、すみだブランドのモノを買ってもらうためのイベントとして、オープンファクトリーによる観光で人を呼びたいと考えたという。こうして墨田区がイベントの実施のために声をかけたのが、「配財プロジェクト」だった。配財プロジェクトは墨田区内の製造業者を中心に、工場で出る廃材に新しい価値を吹き込んで“配財”にしていこうというプロジェクト。2012年に組織化されたばかりで、墨田区のやりたいことと合致したことから、イベントの運営を引き受け、同年、第1回スミファが開催された。

◆スミファ実施と第3回での方向転換

第1回スミファには30件ほどの企業が参加してオープンファクトリーを実施。ワークショップやまちめぐりツアーのほか、先行事例だったモノマチやおおたオープンファクトリーからゲストを招いてトークショーを行った。翌年の第2回スミファではその路線を拡大して50件以上が参加し、新たにマーケットを開催するなどして4000人の来場者を記録する一大イベントになった。その一方、イベントの規模が大きくなったことによる反省も出た。スミファ実行委員会の斉藤靖之さん(マルサ斉藤ゴム代表取締役社長)は、「さまざまなコンテンツを盛り込んだために、参加してくれた企業へのフォローが全くできなかったんです。そこで第3回は、“スミファでつながる縁”をテーマに、もっと丁寧にやろうと方向転換を図りました」と語る。

公募により集めた参加者を実行委員会側で選ぶこととし、12社に絞りこんでガイドが牽引するツアーを充実させる方向に舵をきった。若者・学生向けのもの、デザイナー向けのもの、女性向けのものなど、ターゲット層を明確にしたツアーを企画。さらに外部スタッフにより、各企業をじっくり取材してホームページ上で紹介。ツアー参加者が訪問する企業に対するイメージを膨らませた上で参加できるようにした。工場と参加者が双方向にコミュニケーションをとり、ビジネスにつなげることが狙いだ。

 

◆今後のスミファ運営

ツアー重視の第3回スミファは企業にとっても、意識の高い参加者との密なコミュニケーションにより新しい視点が得られたと、一定の成果を得た。実行委員メンバーは、次年度以降も、規模は同程度を維持しながらも、また切り口の違ったツアーを企画したいと意欲を見せる。

代表的な企業のご紹介

区内には約3400社の町工場があり、その8割が従業員数9人以下の小規模ないし家内工業的な工場だ。ものづくり産業のジャンルは多岐にわたり、金属加工、皮革、メリヤス、繊維製品、プラスチックやゴム製品、印刷など、人々の生活に欠かせないさまざまな製品の製造に関わっている。小規模工場同士の多彩なネットワークも形成されており、スミファ開催前から職種・業種を越えた横のつながりもあったという。

浜野製作所 【 金属素形材製品 】

昭和53年創業。板金加工、プレス加工などを得意とし、さまざまな製品の設計・開発に携わる。2014年には、3Dプリンタやレーザーカーッターなどの最新機器を備えたモノづくり総合支援施設「ガレージスミダ」を創設した。 

松山油脂【 石けん・化粧品 】

1908年創業、化粧石けんやスキンケア商品を製造販売する。昔ながらの釜炊き製法で、シンプルで肌にも環境にもやさしい石けんを作り続けている。希望者は事前に予約することで工場見学ができ、会社をあげて受け入れ態勢を整えている。

チバプラス【プラスチック射出成形加工】

昭和44年創業。自動車部品からボールペンの部品までさまざまな用途のプラスチックを豊富な経験と最新の技術で製造。自社オリジナルの「お皿まな板」を開発し、新たなジャンルへと展開中。

東北紙業社【 抜き加工・象嵌加工 】

等身大パネルやパズルなどの抜き加工や、紙の中に別の紙を埋め込む紙象嵌などの加工を得意とする。デザイナーとのやりとりも多く、クリエイティブな考えを形にすることに意欲を燃やす、クリエイターの強い味方。